最近ロードではパワトレの話が尽きないので、
その辺を僕なりに計算で考えてみました
ワット数は、前の設計の仕事ではモーターの選定でよく計算していたので、どうも感覚にズレがありました
(1)40km/hで巡航しているロードバイクに必要なワット数は?
全負荷=
空気抵抗+
タイヤの転がり抵抗+
駆動伝達損失
が分かれば、
仕事率=全負荷*速度でワット数が出てきます
空気抵抗=0.5*大気密度*CdA*速度^2
CdAが一番問題ですが、こちらの海外のHPに載ってました
総重量83kg、装備とバイクを10kgとすると体重73kgの
なかなかイイガタイの外人が下ハンドルを持って40.1km/hのときにCdA=0.310だそうです
これを代入してガシャガシャ計算すると空気抵抗は2.76kg/fと出てきます
タイヤの転がり抵抗=総重量*転がり係数なので、
外人を真似して総重量を83kg、
転がり係数は、例えばミシュランpro3は0.00312だとメーカーが公表してます
これで計算すると転がり抵抗は0.29kg・f
最後に駆動伝達損失ですが、
一般機械用の数字を抵抗の少ないロードバイクに単純には適用出来ない・・・
しかしググルと出力のおよそ4%が駆動抵抗と出ているではないか!あぁ何て小さい!
途中計算は飛ばしてまとめると、
仕事率(W)=空気抵抗283W+タイヤの転がり抵抗32W+駆動伝達損失12W
自転車+装備=10kg
体重73kgの人が、
速度40km/hで走ると、
必要な出力は
合計327ワット!おぉ!案外それっぽい数字?!
ここから分かることは、
空気抵抗87%
タイヤの転がり抵抗9%
駆動伝達損失4%
ほとんど空気抵抗です
(2)次に体重が80%軽い人(58.4kg)で考えて見ます
こちらの人も平均体重だとすると、身長も減った分、当然CdA値が減ります
身長が2倍になると表面積は4倍、体積(体重)は8倍になるので、
体表面積はルート0.8倍に減
自転車の空気抵抗とライダーの空気抵抗はおよそ7:3と資料にあるので、
体重58.4kgの人の場合、計算すると空気抵抗は261W
転がり抵抗も軽くなった分、26Wに減ります
合計すると、
仕事率(W)=空気抵抗261W+タイヤの転がり抵抗26W+駆動伝達損失12W
自転車+装備=10kg
体重58.4kgの人が、
速度40km/hで走ると、
必要な出力は合計299ワット
ここから分かることは、
体重73kgの人は
体重比4.5倍
体重58.4kgの人は
体重比5.1倍
平地で巡航する場合、同じ速度を出すのであればガタイがイイ人の方が有利です
(3)ヒルクライムの場合を考えて見ます
せっかく先日Kさんが蔵田のデータを公開してくれたので、
その数字を勝手に使わせてもらいます(すいません&ありがとうです!)
距離3540mで235m上昇するので、100mで6.6m上昇、平均斜度6.6%です
ずーっと速度は一定とすると、
全負荷=空気抵抗+タイヤの転がり抵抗+駆動伝達損失
+位置エネルギー
(1)から位置エネルギーが増えます
83kgを235m上昇するための仕事は
191149J、
ゴールまで
786sかかっているので、位置エネルギーは
240W
総重量83kgとして、
Kさんの
平均速度16.1km/hの場合、ガシャガシャ計算すると、
仕事率(W)=空気抵抗45W+タイヤの転がり抵抗26W+駆動伝達損失12W
+位置エネルギー240W
必要な出力は
合計329ワット
ここから分かることは、
空気抵抗14%
タイヤの転がり抵抗9%
駆動伝達損失4%
位置エネルギー73%
空気抵抗の占める割合は一気に減り、ほとんど登るために仕事してます
(4)自転車を軽量化すると、どのくらい効果があるか?
頑張って
0.5kg軽くした場合、
40km/h平地巡航の場合、(1)より、必要な出力は326.8ワット
(0.2ワット減)
蔵田ヒルクライムの場合、(4)より、必要な出力は327.4ワット
(1.6ワット減)
平地巡航は軽量化してもほとんど効果ないですけど、
ヒルクライムはそれなりに効いてきます
(この場合は効果が8倍も違う!)
(5)ホイールを軽量化すると、どのくらい効果があるか?
平地を巡航するのであれば、計算上、
体重を0.5kg軽くするのと、
ホイールを0.5kg軽くするのは、
同じ効果です
ホイールの軽量化に効くのは
加速減速
自転車部品の中でホイール+タイヤは
慣性モーメントを大きく持つ要素です
速度ゼロから、30km/hまで加速するのに、5秒かかったとします
30km/hのときホイールは240rpm
ここでなんと、
こちらのサイトにホイール単体の加速に必要なエネルギーが実測値として出てます
例えば、
ハイペロン(1255g)は97J→19.4W
レーシング7(1873g)は134J→27W
ここで240rpmまで回転させるエネルギーだけではなく、
30km/hまで加速させるのでそのエネルギーも考慮するとそれぞれ、
ハイペロン(1255g)は28W
レーシング7(1873g)は39.9W
ホイールの重量は618g軽くなり、必要な仕事率は
11.9W減
ホイール以外の重量を618g軽量化した場合(例えばフレームとか)は仕事率
4.3W減なので、
この場合のホイールの軽量化は、ホイール以外の軽量化に比べて、
2.8倍の効果が出ます
ちなみに総重量83kgがこの加速をするための全仕事は、
ざっくり計算して
650Wくらい必要です
しかしこういう計算をしていくと、
各メーカーのエアロフレームは40km/hで20W削減だとか、
色々とすごい数字が並んでますけど、
それが10W減だとしても、凄い性能アップだと感じます
そしてそれがトライアスロンのような平地巡航であれば、
例えフレームが0.5kg重くなったとしても、
空気抵抗をちょっとでも削減した方が結果として速くなるのでしょう
最後に。。。実はスポークの空気抵抗増加分は計算に入っていません
スポークは一周回る毎に速度ゼロ、速度の2倍、を繰り返して空気抵抗になってます
難しすぎて計算できないし、実際抵抗はかなり小さいと思うので省略しました